田牧大和(たまきやまと)さんの文庫書き下ろし時代小説、『錠前破り、銀太』が講談社文庫より刊行されました。
しがない蕎麦屋を営む銀太、秀次の兄妹と、北町奉行所吟味方与力助役の貫三郎は幼馴染み。吟味で腑に落ちないことがあると、貫三郎は身分を隠して二人に知恵を借りに来る。そんな三人が江戸中を騒がす連続辻斬り事件に巻き込まれた……。
幼馴染みの三人が力を合わせて、連続辻斬り事件の真相を暴く、時代ミステリー。ユーモアがある軽快な語り口で、ワクワクするスリリングな物語が展開していきます。
上背は、銀太に少しだけ足りないだろうか。女にしては背が高い。年の頃は二十四、五、目鼻立ちのすっきりした、きりりと凛々しい美人だ。
青磁鼠の、淡くくすんだ青緑と深縹の細かい縦縞の小袖に、濃鼠の帯は男結び。鯔背に腰端折りをした裾から覗くすらりとした足は留紺の股引を纏っている。
髪は、きゅっと櫛巻に纏め、真鍮の簪は、大小の千鳥を透かした凝った細工。
(『錠前破り、銀太』P.15より)
「女錠前師謎とき帖」シリーズのヒロイン、緋名(ひな)が登場するのもファンにはうれしいところです。三人の男たちに、女錠前師の緋名がどのように絡んでいくのか、なんだか傑作の予感がします。
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『錠前破り、銀太』
『女錠前師謎とき帖 緋色からくり』(新潮文庫)