誉田龍一(ほんだりゅういち)さんの文庫書き下ろし時代小説、『お裁き将軍 天下吟味 公事上聴』がコスミック・時代文庫より刊行されました。
「これにて、一件落着」
北町奉行・遠山左衛門尉景元が発しようとしたとしたとき、御簾のうちからその声を遮る咳払いが聞こえる。ここは江戸城吹上御庭、将軍が裁判を上覧する「公事上聴(くじじょうちょう)」が行われていた。十二代将軍徳川家慶は、ことにこの行事に関心を持ち、裁きに不審を抱いた折などは、こうして自ら裁定に待ったをかけたのだった。
庶民の冤罪の疑いを晴らし、その命を守ることこそ将軍の使命と心得る家慶は、しばしば、景元と密かに町に出て事件を追うことに。遊び人の慶次郎と金次に扮した二人は、推理を駆使して調べ直しを行い、真相の究明に挑む。
今度の書き下ろし長編シリーズの主人公は、徳川十二代将軍徳川家慶です。幕府が揺れ動く天保時代を治世とする家慶は多くの時代小説に登場しますが、彼を主人公にした作品は多くありません。文庫書き下ろしでは、千野隆司さんの『徳川家慶、推参』がまず頭に浮かびます。市井の暮らしぶりを知り、政に生かしたいとの願いを持って、城を抜け出し江戸の町を物見に出かける若き日の家慶が描かれていました。
本作で、誉田さんがどのように新しい家慶像を描くか興味津々です。金さん(遠山景元)との掛け合いも楽しそう。
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『お裁き将軍 天下吟味 公事上聴』