植松三十里(うえまつみどり)さんの歴史時代小説、『愛加那と西郷』が小学館文庫より刊行されました。『黍の花ゆれる』(2005年・講談社刊)を改題し、加筆改稿して文庫化したものです。
薩摩藩から奄美大島に流人として送られた西郷隆盛。不遇な西郷を世話することになったのは、島の名家の娘・愛加那だった。二人は当初、文化の違いから反発し合うが、やがて理解し合い、愛加那は西郷の“島妻”となる。二人の子にも恵まれるが、あるとき西郷が帰藩することになる。愛加那は西郷を、国のために活躍する男と信じて送り出す……。
愛加那(あいかな)さんは島妻として島に残り、歴史の表舞台に出てこなかったこともあり、これまで時代小説ではあまり描かれてこなかったように思います。司馬遼太郎さんの『飛ぶが如く』を原作に、1990年に放送されたNHK大河ドラマでは、愛加那役を石田えりさんが演じていました。
さて、植松さんの『愛加那と西郷』は、生涯西郷を信じた愛加那をヒロインにした恋愛時代小説です。島で緩やかな時間を過ごす西郷の姿も描かれて新鮮。南の島を舞台にした、ピュアでちょっとせつないラブストーリーに浸りたいと思います。