植松三十里(うえまつみどり)さんの長編歴史時代小説、『不抜の剣(ぬかずのけん)』がエイチアンドアイより単行本で刊行されました。
越中の農民の子に生まれながら侍を志し、十五歳で単身江戸に出た弥九郎。心ある人々との出会いを通じて、当代一流の武術に加えて、和漢の学問を修め、剣術道場の練兵館を創設し、桂小五郎をはじめとする多くの維新回天の志士を育てた……。
斎藤弥九郎は、“幕末江戸三大道場”の一つ、神道無念流練兵館の創設者として知られていますが、その一方で、当時最先端の軍事技術理論家で、伊豆国韮山代官・江川太郎左衛門(英龍)を補佐し、欧米列強の脅威に対し、江戸の海防政策の現場で闘った人物でもあります。
なお、江川太郎左衛門と弥九郎の二人が、当時治安の悪かった甲斐国の状況を見て回った、「甲州微行」は、暁知明(あかつきともあき)さんの『隠密代官 甲州街道刀売り道中』に描かれていました。
剣豪としてだけでなく、維新の原動力となった志士を育てた教育者として、また、欧米列強の脅威が迫る中で、国を守るために武器を使わずに闘い続けた侍、斎藤弥九郎の激動の生涯。世に知られていない人物を独自の視点でクローズアップし、多くの傑作を生みだしてきた植松さんがどのような物語を紡ぐのか、期待に胸が膨らみます。
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『不抜の剣』
『隠密代官 甲州街道刀売り道中』(暁知明・だいわ文庫)