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武人、密偵、俗人西行から源平の時代を裏読む

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桜と刀 俗人西行火坂雅志さんの『桜と刀 俗人西行』を読了しました。2015年2月に急逝した著者が歴史小説で描きたかった人物、西行の新たな姿に光を当てた、歴史読み物です。

西行は、「漂泊の歌人」「数寄者」として、文化人としての面や聖なる部分から語られることが多い人物です。しかし、その実像は、武のエリートかつ武術の達人であるとともに、恋に悩む若者であり、出家してからも平清盛や源頼朝、崇徳上皇、後白河法皇などの実力者と深く関わっている、“俗”の部分を持ち合わせています。

火坂さんは、あとがきで、「デビュー作が『花月秘拳行』だったこともあり、西行には以前から深い関心を抱いていた」と書かれているように、西行に惹かれ続けた作家です。デビュー作のタイトルも、西行が“花と月の歌人”と呼ばれたことから付けられていて、伝奇時代小説であるこの作品で、武術の達人たる西行を描いています。

願わくは 花の下にて 春死なん その二月の 望月のころ

西行の辞世の歌も、散る桜を題材にしています。

本書では、知られざる西行が垣間見られるとともに、源平の時代の実力者たちと西行との関わり合いに触れられていて、とても興味深いです。もし火坂さんが、西行の目を通して、平安末期から鎌倉にかけての激動の時代を描いた歴史小説を著されていたら、本書はその貴重な創作ノートに位置づけられそう。200ページに満たない読み物ですが、いろいろと妄想が膨らむ一冊です。

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『桜と刀 俗人西行』
『花月秘拳行』