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大地震に襲われた江戸の町を、新米同心が駆ける捕物小説

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猫背の虎 大江戸動乱始末『連鎖』『ホワイトアウト』『奪取』など現代ミステリーや冒険小説で活躍されている、真保裕一(しんぽゆういち)さんの『猫背の虎 大江戸動乱始末』は、安政の大地震に襲われて、被災した江戸の町を舞台にした時代小説です。

安政二年、大地震が江戸を襲った。騒乱の中で、新米同心の大田虎之助は臨時の町廻りを命じられる。被災者による傷害事件、不審な遺体の発見や赤ん坊のかどわかしなど、さまざまな出来事に遭遇する。大柄で気の優しい虎之助は迷いながら、岡っ引きの松五郎や勝ち気な母や姉らに助けられ、住む場所と家族を失った人々のために町を駆ける……。

身の丈六尺近い偉丈夫の虎之助は、口やかましい母・真木と勝ち気な二人の姉の初音と若菜と暮らしています。この三人に一方的に口撃される様子が笑いを誘いますが、時には、事件解決をヒントをつかむことも。

三年前に亡くなった父は、町衆から仏の大龍と呼ばれた、人情味が厚く、腕利きの同心だったそう。大きすぎる父の遺した痕跡が、虎之助を悩ませもします。長身に加えて、置かれた境遇から、いつのころから背を丸めて歩く姿から、猫背の虎とも呼ばれるように。

物語は、町廻り中に虎之助が出合う数々の事件を描きながら、大地震の爪痕を浮かび上がらしていきます。それぞれの事件は地震と関連して発生し、地震が人々に与えた心理的なダメージまで伝わってきます。

江戸小説は初めてという著者ですが、未曾有の災害を臨場感豊かに描き、被災しながらも、なお懸命に生きる市井の人々の姿を感動的に描いています。そして、主人公の虎之助も事件に遭遇し悩み奮闘することで、成長していきます。安政大地震を正面から取り上げ、明日に生きる勇気が湧いてくる傑作人情捕物小説です。

2016年「第11回江戸文化歴史検定」の“今年のお題”は、『天下大変~江戸の災害と復興』とのこと。来年は、江戸の災害について、少し勉強してみたいと思います。

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『猫背の虎 大江戸動乱始末』