誉田龍一(ほんだりゅういち)さんの『定中役捕物帖 金と銀』が徳間文庫より刊行されました。定中役(じょうなかやく)とは、手が足りない時などに臨時に出役などに駆り出される役目で、奉行所内でも窓際にあたります。本書は、しくじりにより花形の定町廻り同心から定中役に回された一ノ瀬金吾と、無口な切れ者・神賀銀十郎のコンビが活躍するシリーズ第2作目です。
将軍の御成(おなり)に備えて、市中警備のため高積見廻り同心の手伝いを命じられた一ノ瀬金吾は、通りがかりの荷車の轍が深く沈み過ぎていることに不審を抱く。鉄砲の抜け荷と睨んだ金吾は、元盗賊で軽業が得意の、楊枝屋の看板娘・お恵を使って小網町の問屋の蔵へと運び込まれた荷車の荷の中身を探らせる。
蔵に忍び込んだお恵が見たものは、鉄砲ではなく小判、それも金座の御金改役の署名が入った新品の切り餅(紙で包んだ金貨)だった。意外な荷の背後には幕府を揺るがすような大きな陰謀が横たわっていた……。
高積見廻りとは、市中や河岸などで積まれている荷や材木、薪などを見廻って、盗難や危険防止のために、その高さや重ね方などを取り締まるのが仕事の、奉行所のお役目です。
タイトルの「金と銀」は、主役の二人の名前から取っているほかに、今回の主題が小判絡みであることにも掛けているのでしょうか。物語は、武家屋敷を専門に狙う盗賊による盗難騒ぎ、飾り職人の子供の不可思議なかどわかし事件も絡んで、ミステリータッチで展開します。粗忽な熱血漢の金吾と無口な切れ者・銀十郎という正反対なキャラクターの対比も楽しく、一気に読ませます。
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『定中役捕物帖』
『定中役捕物帖 金と銀』