平岩弓枝さんの『新・御宿かわせみ 4 蘭陵王の恋』(文春文庫)を読みました。るいや神林東吾、畝源三郎らの子供たちを主人公にした「明治のかわせみ」の第4弾です。
神林麻太郎のイギリス留学時代の友人・清野凛太郎(すがのりんたろう)が帰国し、「かわせみ」に姿を現す。凛太郎は、御所に仕える楽人だった。るいの千春の弾く琴の音に惹かれ、二人は次第に思いを寄せ合うようになるが……。表題作のほか、「イギリスから来た娘」「麻太郎の友人」「姥捨山幻想」「西から来た母娘」「殺人鬼」「松前屋の事件」の七編を収録する。
「蘭陵王」は雅楽の曲目の一つで、中国の南北朝時代、北斉の蘭陵王、高宗の孫に当たり、才智武勇、共に優れ、しかも美男の誉れ高い王子で、戦の時は龍の仮面をつけていた人物をモデルにしたと伝えらえる華やかな中にも哀愁の漂う曲だそうです。
ショッキングな形で主人公たちの世代交代をした「新・かわせみ」も4作目になり、主要な登場人物たちの役割やキャラクター設定が落ち着くところに落ち着いた感じで、安心して読めるようになりました。
そんな中で、今回、麻太郎の友人役で、式部寮の楽人の凛太郎が初登場します。華やかさと爽快感を兼ね備えたキャラクターで、『御宿かわせみ』の「美男の医者」の天野宗太郎(後の麻生宗太郎)を想起させて、オールドファンもうれしいところです。
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『新・御宿かわせみ 4 蘭陵王の恋』
『御宿かわせみ 8 白萩屋敷の月』