小嵐九八郎(こあらしくはちろう)さんの『鬼の花火師 玉屋市郎兵衛』が宝島社文庫より上下巻で刊行されました。
百姓のせがれ・友之助は、浅間山噴火で両親を亡くしながらも、その噴火の美しさに魅入られる。被災後を何とか生き延びて、花火師となるべく江戸へ出て、新八と名乗りを変えて、花火屋の玉屋、鍵屋に奉公する。よりきれいな色と形の、より響く音の、そして江戸城を超える高さの打ち上げ花火を上げるために、新八は、殺人、放火、乗っ取りと悪の限りを尽くして、三代目玉屋市郎兵衛の座を手に入れる……。
玉屋、鍵屋が登場する江戸花火小説というと、矢的竜さんの『大江戸 女花火師伝』や稲葉稔さんの『大江戸人情花火』が思い出されます。忘れていけないのが、小嵐さんの江戸花火小説の大傑作『悪たれの華』(2006年、講談社刊)。本書はその待望の文庫化です。
夏の暑さを吹き飛ばす花火、一瞬の瞬きに命を賭けた男・三代目玉屋市郎兵衛の壮絶な一代記を読みたいと思います。
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『鬼の花火師 玉屋市郎兵衛 上』
『鬼の花火師 玉屋市郎兵衛 下』
『大江戸 女花火師伝』(矢的竜・中公文庫)
『大江戸人情花火』(稲葉稔・講談社文庫)
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