俳優の児玉清さんが5月16日、胃がんのため亡くなられた。77歳だった。児玉さんというと、TVを通しては温厚な紳士のイメージがあり、理想の上司や父親的な存在だった。しかし、自分にとっては、確かな本の目利きとして尊敬する人物の一人だった。
児玉さんが解説を担当された文庫本はいずれも折り紙付きの面白さで、安心して心ゆくまで作品の世界を堪能できた。時代小説についても、永年のファンで、いつも温かいまなざしを向けてくれていた。ご冥福をお祈りしたい。
児玉清さんの訃報に触れて、Twitterで下記のようにつぶやいた。
児玉清さんが文庫巻末の解説を書かれた作品にはハズレがない。読もうと思っていた本の解説が児玉さんだと得した感じがする。もう、こういう感じは得られないのだろうか。誰か児玉さんの解説リストを作ってくれないかな。
このつぶやきにレスしてくれたわけではないと思う(同じように考えてアクションを取った人が多かったのだと思う)が5月17日には、Toggeterに「児玉清さんの文庫解説リスト」ができて、あらためて児玉さんの読書人として影響力とネットのスピード感を再認識した。
http://togetter.com/li/136912
さて、他力本願ではなく、蔵書とブックリストをもとに、自分でも「児玉清さんの解説が楽しめる時代小説リスト」を作ってみた。
『贋作天保六花撰』 北原亞以子著(講談社文庫・2000/6)
貧乏御家人の入り婿となった片岡直次郎は、病弱で世間知らずな妻・あやのを養うために、ゆすりたかりの悪行も厭わぬ。河内山宗俊、金子一之丞、三千歳ら六人の悪党が繰り広げるピカレスク時代小説。
北原流に味つけされた「天保六花撰」は、登場人物たちの役の設定をそのまま伝承しながら、まったくといっていいほどこれまでの物語とはフィーリングの違う素敵なお話に変化していた。(解説より)
『おひで 慶次郎縁側日記』 北原亞以子著(新潮文庫・2002/09)
『鬼哭の剣』 北方謙三著(新潮文庫・2006/03)
『攘夷 交代寄合伊那衆異聞』 佐伯泰英著(講談社文庫・2007/11)
『弥勒の月』 あさのあつこ著(光文社時代小説文庫・2008/8)
小間物問屋遠野屋の若おかみ・おりんの死体が竪川べりで発見された。「どう考えても、ただの飛び込みだ……しかし、あの男は気になる」。北定町廻り同心の木暮信次郎は、妻の検分に立ち会った遠野屋主人に違和感を覚え、事件の謎を追った。
ミステリアスなストーリー展開の面白さも絶品ながら、『弥勒の月』の一番の魅力は、信次郎、伊佐治、清之介の突出したキャラクターにある。(解説より)
『牛込御門余時』 竹田真砂子著(集英社文庫・2008/8)
『柳生薔薇剣』 荒山徹著(朝日文庫・2008/9)
『かんじき飛脚』 山本一力著(新潮文庫・2008/9)
『孤宿の人 下』 宮部みゆき著(新潮文庫・2009/11)
『夕映え 下』 宇江佐真理著(ハルキ時代小説文庫・2010/06)
『霧の果て―神谷玄次郎捕物控〈新装版〉』 藤沢周平著(文春文庫・2010/9)
『忍びの国』 和田竜著(新潮文庫・2011/2)
無門は伊賀一の腕を誇る忍びだが、無類の怠け者。女房に稼ぎのなさを責められて褒美目当てに働くが…。折りしも、伊賀攻略を狙う織田信雄軍と百地三太夫率いる伊賀忍び集団の壮絶な戦いが始まる。「天正伊賀の乱」を描いたエンターテインメント忍者小説。
そうくるのか!! 凄い!! 流石!! やるもんだ!! 想像を絶する人間和の超妙技に何度喝采したことか。果し合いの面白さが満載の物語は、もうそれだけでも大満足。思わず身体に力が入って筋違いを起こさないよう御要心ご用心!!(解説より)
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