輪渡颯介(わたりそうすけ)さんの『掘割で笑う女 浪人左門あやかし』を読了しました。第38回メフィスト賞受賞作で、「時代小説+怪談+ミステリ」の3つの要素が融合した作品に仕上がっています。
主要な登場人物の一人、剣術遣いの苅谷甚十郎と同様に、怪談やホラーは大の苦手な私ですが、酔いどれで腕が立つ浪人・平松左門の痛快なキャラクターの魅力にも助けられて、大いに楽しめました。
■ 神田松永町の長屋に住む浪人・平松左門は、剣の腕も立つが大の酒好きでいつもよ酔いどれていた。酒よりも好きなものは怪談話。左門が雇われ師範を務めていた道場に通っていた苅谷甚十郎も剣の腕は飛び切りだが、臆病者で怪談話が苦手だった。その甚十郎の国許で、十年前に家老が闇討ちされた。当時、「女の幽霊を見た者は死ぬ」という噂話が流行っていた。そして、再び家老の闇討ちが起こり、甚十郎が事件に巻き込まれることに…。
「狸だと思います。狐狸が人を化かす時の様子がそうだと聞いたことがあります。あの辺りは狸が多いと聞いていますので狸でしょう」
(『掘割で笑う女』P.213より)
♪ 世の中の珍談奇談、怪談話を集めて回り、怪奇現象を合理的にとらえる左門と、国許で幽霊を実際に見て、怪異現象を狸のせいにする甚十郎の推理の対比ぶりが面白かった。3月に発売になるという、2作目も読みたいと思いました。
「掘割」の「掘」は「堀」の字ではなかった。要注意!!
●データ
カバーデザイン:松 昭教
カバー装画:おおさわ ゆう
解説:末國善己
第1刷:2010年1月15日
344ページ
648円+税
時代:明記されず
場所:国許(とある小藩)、江戸・神田松永町、堀江町、押上村、深川・平清
おすすめ度:★★★★☆
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