寛政の棄捐令とモラトリアム

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亀井金融担当大臣から、返済猶予制度(モラトリアム)の法制化の話が出て、それに対してさまざまな意見が出されている。中小企業やローン返済に困っている人を救済するというこの制度の話を聞いて、松平定信の寛政の改革の一環で行われた棄捐令を思い出した。

棄捐令は、Wikipediaの「札差」(2009/10/3時点)の項に、以下のとおり説明がなされている。

札差 - Wikipedia

旗本・御家人達の札差からの借金を、発布された1789年より6年以前(1784年)までの分は帳消し、5年以内(1785~1789年)の分は利子をこれまでの年利18パーセントから3分の1の年利6パーセントに下げ、永年賦とするという法令である。また、資金不足に陥った札差達のために、資金を貸し下げる札差御改正会所の設立も、この時に決められた。

棄捐令が施行される前後の様子は、山本一力さんの時代小説『損料屋喜八郎始末控え』に詳しく描かれている。棄捐令が施行された直後、旗本・御家人たちの快哉を浴びたが、数カ月経つと貸し渋りが発生し、年を越せないような深刻な困窮状況に陥る。また、経済的な打撃を受けた札差が消費を極力控えたことで、江戸の町の景気は一気に冷え込むことになる。

損料屋喜八郎始末控え (文春文庫)

損料屋喜八郎始末控え (文春文庫)

棄捐令は、幕臣の借金の帳消しという近視眼的な対策を講じた結果、失敗を招いている。なぜ、借金を作らざるを得なくなったのかの分析とそれに対する構造改革がなされていないことが大きな問題だった。

さて、今回の返済猶予制度についても、導入する前に、十分な検討が必要に思う。中小企業や個人がなぜ返済できないのか? 景気の問題なのか、雇用の問題か、円高の問題なのか、ビジネスモデルが悪いのか?