梓澤要(あずさわかなめ)さんの『ゆすらうめ 江戸恋愛慕情』を読んだ。梓澤さんは、1993年に「喜娘(きじょう)」で歴史文学賞を受賞して作家デビューした。寡作ながらも、奈良時代もの、戦国時代もの、江戸時代ものとさまざまな時代を取り上げている。歴史ミステリー『百枚の定家』の感動的なほどの面白さは忘れられない。
- 作者: 梓澤要
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/09/08
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- 作者: 梓沢要
- 出版社/メーカー: 新人物往来社
- 発売日: 1995/12
- メディア: 単行本
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- 作者: 梓沢要
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2001/08
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本書は、『恋戦恋勝』(2006年8月、光文社刊)に、単行本未収録の「山陰の橋」を加えて改題して文庫化したもの。
目次
巻之一 恋戦恋勝
巻之二 恋は隠しほぞ
巻之三 ゆすらうめの家
巻之四 一陽来復
巻之五 火の壁
巻之六 色なき風
巻之七 山陰の橋
解説 宇江佐真理
巻之七の「山陰の橋」を除いて、滝沢馬琴の息子の妻、路を中心に、二人の周辺にいる女たちの恋模様を連作形式で描いた短編集である。
ゆすらうめは、春、梅の少し後、桜によく似た五弁の花をつける。白い花もあるが、この木は、ごくごく淡い、ほのかな薄紅色の可憐な花を咲かせる。
それが、入梅前の初夏のちょうどいま頃、親指の先ほどの、丸い赤い実になるのである。
細い枝に、濃緑の葉を押し分けるようにして、びっしりと赤玉が連なっている。
(『ゆすらうめ』「ゆすらうめの家」P.97より)
路は夫に先立たれて、二人の子供と舅である滝沢馬琴と暮らしている。目の見えなくなった馬琴は、二十七年にわたって延々と書き続けてきた畢生の大作『南総里見八犬伝』の口述筆記を路にさせていた。ある日、馬琴の古くからの知人、倉田屋幸右衛門が訪ねてきた。庭で熟していたゆすらうめの実を供すると、幸右衛門は本所にあった小料理屋での出来事を語り出した…。
江戸の女たちのいろいろな恋愛話が楽しめるとともに、舅・馬琴と嫁・路の心のつながり、『南総里見八犬伝』の誕生秘話が垣間見ることができて面白い。