江戸都市研究家と古地図出版社の好コラボ

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『えどちりクエスチョン 其の二 江戸のしくみ編』を読む。「江戸のかたち編」に続く、「えどちり」シリーズの第二弾。

もくじより

江戸切絵図の見方

第一章 江戸の「まち」の役割 人と物が行き交う百万都市

問1 「町」の読みはマチ?チョウ?

コラム 江戸割絵図〈切絵図〉の誕生

問2 「片町」とはどんな町?

問3 江戸っ子はみんな職人?

問4 三伝馬町の役割分担

問5 製造・流通のコントロール機構「座」

コラム 動物にちなんだ地名色々

問6 水辺に面した江戸屋敷

コラム 下りもの・下らないもの

コラム 菱垣廻船と樽廻船

問7 中山道のメリット

問8 諸国と江戸の玄関口、一時廃止の宿場は?

第二章 町のしくみ 庶民の生活空間と町の制度

問1 路次に横丁に新道

問2 「向こう三軒両隣」の範囲は?

問3 アーケードと下水溝

コラム 沽券図という公図

問4 路上施設の公共的役割

問5 町中での捕物に欠かせないものは?

第三章 大縄拝領地と町の増加 米の「まち」から金の「まち」へ

問1 八町堀は芸術の町?

問2 大縄拝領地の立地

問3 大名屋敷と大縄拝領地

コラム 用途別の大縄拝領地

問4 もう一つの奉行所

コラム 拝領町屋敷

コラム 寛永江戸全図

第四章 江戸の記憶 行事と風俗に見る地理と制度

問1 天下祭のルートと江戸城

問2 将門首塚の由来

問3 精進落としの定番は?

コラム 〈ひろめ〉について

問4 大名屋敷の玄関先にあるものとは?

コラム 地理で見る「劇場」~杭上家屋

コラム 横丁の稲荷

えどちりクロスワード

おわりに

A5判で2色刷り、110ページあまりということで、江戸切絵図を多く掲載しながら、江戸の姿かたちを、クイズ形式で、江戸のスペシャリストが答えるというスタイルで、手軽に読める仕様の江戸ものしり本である。ところが、この本が江戸オタクにとっても、なかなかどうして侮れない内容になっている。

著者でクイズの解説をしているのが、江戸の成立について多くの著作をもつ都市史研究家の鈴木理生(すずきまさお)さんであるところによるところが大きい。「町」についてその役割や仕組み、発展などをさまざまなポイントをわかりやすく解説してくれている。町人の住む土地を「チョウ」と読んで、武家地である「マチ」と区別したこと。公道に対する補助的な道路である路次、横丁、新道に違いがあること。本来の「町(チョウ)」約百五十町が八百八町に、やがて約千七百町に増えたのは都市面積の拡大ではなく地目の用途変更の結果だったこと。などなど、自分にとって新しい発見があった。

神田祭と山王祭は、ともに将軍が祭の巡行を江戸城内に迎えて見物する天下祭と呼ばれるが、将軍家がどのように祭をとらえていたか、江戸天下祭の影響を受けた祭が全国に広まったこと、祭自体の本質などを解き明かした章が興味深かった。

本書の中では、江戸町奉行所が三つあった時代のことや江戸四宿の一つが一時廃止された時代があったことにも触れられている。前者は南原幹雄さんの『灼熱の要塞』で、後者は杉本苑子さんの『冬の蝉』で時代小説に描かれている。

灼熱の要塞 (集英社文庫)

灼熱の要塞 (集英社文庫)

冬の蝉 (文春文庫 (す1-29))

冬の蝉 (文春文庫 (す1-29))