シェア型書店「ほんまる」で、「時代小説SHOW」かわら版を無料配布

将軍家御典医の娘を通して幕末・維新の活写する読み物

アドセンス広告、アフィリエイトを利用しています。
スポンサーリンク

安藤優一郎さんの『将軍家御典医の娘が語る江戸の面影』を読んだ。将軍家御典医(奥医師)の桂川家第七代の甫周国興(ほしゅうくにおき)の次女として生まれた、今泉みねが書いた『名ごりの夢 蘭医桂川家に生まれて』をテキストに、姫さまの見た幕末・維新を再現した歴史読み物。安藤さんらしく、資料を丹念に掘り起こして、現代人に興味がもちやすい切り口で、わかりやすく歴史の面白さを説いている。

将軍家御典医の娘が語る江戸の面影 (平凡社新書 419)

将軍家御典医の娘が語る江戸の面影 (平凡社新書 419)

名ごりの夢―蘭医桂川家に生れて (東洋文庫 (9))

名ごりの夢―蘭医桂川家に生れて (東洋文庫 (9))

桂川甫周というと、佐伯泰英さんの「居眠り磐音」シリーズにも登場するが、あちらは四代目の甫周国瑞である。さて、桂川家というと蘭医の系統だが、みねの母方の叔父が勝海舟の上官として咸臨丸に乗り込み、アメリカに渡った遣米副使の木村喜毅(きむらよしたけ)であり、父の弟は旗本の藤沢家の養子となって幕府の陸軍副総裁を務めることになる藤沢次謙(ふじさわつぐよし)であったりして、幕末に活躍する。また、夫となる今泉利春は、佐賀藩士で明治政府では司法省に出仕していた。

お姫さまから一転して維新後の落魄ぶりや「薩長にお辞儀なんかするもんか!」というおきゃんぶり、など主人公のみねのキャラクターがはっきりしていて面白い。明治維新直後の生活は、著者の『幕臣たちの明治維新』にも通じるテーマである。原著の『名ごりの夢』も読んでみたくなった。

幕臣たちの明治維新 (講談社現代新書)

幕臣たちの明治維新 (講談社現代新書)