江戸地図の人文社から発行された『えどちりQuestion(クエスチョン) 其の一 江戸のかたち編』を読んだ。今流行のクイズ形式を交えながら、江戸の地形と都市計画を中心に江戸の地理をわかりやすく解説した読み物である。さまざまな江戸の地図のほかに『江戸名所図会』からの図版もふんだんに掲載している。
えどちりクエスチョン〈其の1〉江戸のかたち編―江戸の地形と都市計画 (ものしりミニシリーズ)
- 作者: 鈴木理生
- 出版社/メーカー: 人文社
- 発売日: 2008/02
- メディア: 単行本
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江戸切絵図集―新訂 江戸名所図会〈別巻1〉 (ちくま学芸文庫)
- 作者: 市古夏生,鈴木健一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1997/04
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タイトルがひらがなで、しかもエビチリのように記載されているとかわいい感じがするが、入門者向けと侮れない。それは、著者が鈴木理生(すずきまさお)さんであるから。鈴木さんは『江戸はこうして造られた』や『江戸の町は骨だらけ』などの著書で知られる、都市史研究家の第一人者である。
江戸はこうして造られた―幻の百年を復原する (ちくま学芸文庫)
- 作者: 鈴木理生
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2000/01/01
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- 作者: 鈴木理生
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2004/08/10
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さて、この「えどちり」では、雑多な事柄をチリ鍋のごとく楽しめるクイズ形式を目指した。項目の立て方も、手当たり次第に、興味のおもむくままに配列した。このような形式になったのは、「知ったかぶり」と「講釈師」の自作自演ではなく、若い方々の協力を得て、自由に列挙してもらった問に答える形に仕上げたからである。みかけの整合性はさておき、謎めいた問に思わず考え込んでしまう「江戸伝来」の問答形式である。
(『えどちりQuestion』はじめにより)
ということで、問いには正答が二つも三つもあったりして、なぞそうなったのか、江戸の地理と歴史の本質を見極めるトレーニングができる。
目次は次のような感じで、随所に著者らしさが出ていて面白い。
第一章 江戸の原形 起伏と川がつくり出した大都市
問1 江戸の海はなんと呼ばれていた?
問2 不忍池と最も深い関係にある池は?
問3 江戸の母なる川、平川はどこを流れたか
問4 江戸の山々
コラム 江戸の凸凹
第二章 江戸と災害 地理で読み解く江戸の災害
問1 平和だと洪水が多いわけは?
問2 記録されていた地震現象
問3 出火場所の共通点は?
問4 震度の目安
問5 江戸時代は寒冷化?
第三章 江戸の都市計画 大江戸プロジェクト
問1 江戸はどういう土地だった?
問2 堀が果たした重要な役割
問3 タテとヨコの基準はどこ
コラム 水運の大動脈「奥川回し」
問4 和田「倉」とはどういう倉?
コラム 日本橋中洲~消えた歓楽地・三股富永町
問5 外堀の石垣は、ほんの少し
問6 お江戸のメインストリート「通り町筋」
コラム 小路は広い道
問7 青物市場の立地条件
コラム 走り物
問8 江戸の大きさ(規模)を決めたには?
コラム 江戸の周り~鳥獣の益害
問9 十一本の堀の謎
問10 橋を架ける時の基準は?
問11 江戸の橋は急勾配
コラム 江戸の住居表示
問12 品川沖に固まる「お台場」
コラム 歌舞伎では江戸の地名はご法度
第四章 江戸の寺と社 自社のネットワークと商い
問1 江戸にお寺が多いのは?
問2 お寺の引越し
問3 神社のランキング
問4 江戸三ヶ寺
コラム 江戸っ子の信心
コラムで興味深かったのは、江戸中期の明和九年(1772)十月から寛政元年(1789)まで、日本橋川の河口の三又を埋め立てて三股富永町が作られて、一時は両国広小路をしのぐ歓楽街になっていたということ。しかし、寛政の改革によって、この町は取り崩されて元の水面に戻されたとそうだ。繁華している町を一つ潰すとは、現代人の目から見ると何とももったいない話だが、松平定信らしい政策ともいえる。この町の興亡を題材にした時代小説があったら、ぜひ読みたいところだ。
さて、『えどちり 其の二』も発行されるようであり、次は江戸のどのようなことを教えてくれるのか、楽しみである。