曽田博久さんの『十両首』を読む。『千両帯』『万両剣』に続くシリーズ第三弾。講武実用流・平山行蔵の最後の弟子で、二十歳にして武芸十八般すべてに目録を得た貧乏御家人の三男坊・柘植新三郎が活躍する時代小説。
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常在戦場を旨とする実用一点張りで激越な世界に身を置き、武芸一筋だった男が、ある事件から年増の三味線の女師匠・冨美豊と出会い、愛と肉欲を知り、堕落した生活を送るようになっていた。王子稲荷に足を延ばした新三郎と冨美豊は帰りに巣鴨村を通ったときに、暴漢に襲われていた初老の男を助けた。重傷を負い、冨美豊の家に連れて帰られた男は記憶を失っていた。新三郎は、わずかな手がかりをもとに男の身元の探索に乗り出すが、その途中で凄腕の男に襲われてしまう…。
千両、万両と来て、今回は十両とデノミになっているが、物語は凄腕の用心棒が敵役で現れたり、スーパーヒールの鳥居耀蔵が登場したりして、スケールがアップした気がする。
今回のタイトルは、江戸時代、十両以上の金を盗んだら死罪であったことを踏まえてのものである。
…(前略)盗まれた金は九両二分ということにした。これなら死罪は免れる。実はこれは特別な事例ではない。商家や家庭内での盗みはよくあることである。誰もが十両で死罪になるのは厳し過ぎると思っていた。町奉行とて人間である。十両で死罪を宣告するのは気持ちのいいものではない。盗まれた方でも、被害を十両以下に申し立てて、死罪だけは免れるようにしていたのである。苛酷な法の下で暮らす人間の知恵と言っていい。
(『十両首』P.221より)
主人公の新三郎が武芸十八般という設定なので敵との対決シーンが圧巻であり、このシリーズの大きな魅力となっている。今回は愛刀の左文字を質屋に入れてしまい、代わりの刀を折られてしまった新三郎が、意外な得物で敵と対峙するシーンが面白かった。