稲葉稔さんの『月夜の始末 武者とゆく【四】』を読んだ。手習い所の師匠で、元肥後藩の剣術指南を務めた桜井俊吾と愛犬の武者が活躍する文庫書き下ろし捕物シリーズの第四弾である。
- 作者: 稲葉稔
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2007/12/14
- メディア: 文庫
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物語で描かれている時代は天保六年、南町奉行・筒井紀伊守政憲の頃。
奉行所の大掛かりな捕り方の包囲網をあざ笑うかのように、盗賊・黒地蔵の甚五郎一味が商家を荒らす。賊には盤所の動きが筒抜けなのだろうか。年番方与力の中村八郎左衛門は、桜井俊吾と元先手組見廻り方の経験がある浪人東郷弥次兵衛に密かな探索を頼んだ。賊に内通した奉行所の役人の自乗を聞いた俊吾らは、井坂友蔵という手だれを追うが…。
役人とは違う、俊吾らの追跡、謎の解明、敵との対決がこのシリーズの魅力の一つ。
前作で個性的な脇役の一人が命を落として姿を消しただけに、今後の展開に一抹の不安を持っていただけに、新キャラクターの弥次兵衛の登場はうれしいところだ。しかも、もう一人、今後主要な脇役になっていく可能性のある登場人物が物語に加わり、ますます楽しみが増してきた。エンターテインメント小説のツボを押さえている。
作品のもう一人(?)の主人公である、ワンコの武者の存在がこのシリーズの大きな魅力、犬好きにはたまらないところ。武者が出てくるシーンを読むだけで癒される思いがする。次は武者の恋犬を登場させてもらいたいなあ。