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享保の改革を推進するキャリア官僚大岡越前

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安藤優一郎さんから最新刊の『江戸のエリート経済官僚 大岡越前の構造改革』(NHK生活人新書)を読んだ。安藤さんは、『観光都市江戸の誕生』や『江戸城・大奥の秘密』などの著作で知られる歴史家で江戸時代研究のスペシャリストである。今回は、江戸南町奉行・大岡越前守忠相を取り上げている。

観光都市 江戸の誕生 (新潮新書)

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江戸城・大奥の秘密 (文春新書)

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大岡越前といえば、TVドラマで知られる名奉行で加藤剛さんのイメージが強い。時代小説では佐伯泰英さんの『密命』シリーズなどにも登場する江戸の有名人。松井今朝子さんの『辰巳屋疑獄』では、晩年の寺社奉行時代の大岡越前が描かれている。

密命〈巻之三〉残月無想斬り (祥伝社文庫)

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辰巳屋疑獄 (ちくま文庫)

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江戸町奉行というと、警視総監と東京高裁裁判長と都知事を兼ね備えたような役職と説明されることがある。ドラマや時代小説ではどうしても、犯罪捜査のトップとしての顔や裁判官としての顔ばかりが取り上げられる。しかし、安藤さんの『大岡越前の構造改革』では、町奉行の江戸行政官僚としての面にスポットを当てていて、新鮮な切り口である。

そして、江戸の行政官としてばかりでなく、享保の改革における経済キャリア官僚としての面を掘り下げていて興味深い。米価政策や物価調整、貨幣改鋳など、大岡越前の果たした役割は大きいことがわかる。

大岡越前守忠相は、八代将軍吉宗の寵臣というだけでなく、本当に有能なキャリア官僚だったがゆえに、千九百二十石の中級旗本から、一万石の大名にまで昇進したのだろう。

忠相は延宝五年、二千七百石の中級の旗本家大岡忠高家の四男生まれて、貞享三年に同族で御徒頭を務める大岡忠真家に養子に入る。元禄十五年に御書院番に召し出され、御徒頭、使番、目付、山田奉行、御普請奉行と順調に昇進し、享保二年に江戸南町奉行に就く。以降、元文元年に寺社奉行に転じるまで三十年にわたって、江戸町奉行を務めることになる。

「大岡裁き」として名奉行ぶりを後世の人々に知られる大岡越前が実際に裁いたのは「白子屋お熊」(白木屋お駒)だけだったそうだが、小さい頃に、加藤剛さんのTVドラマを見て育った一人としてはちょっとがっかりであるが、その反面、江戸幕府の中で、享保の改革の実行者で推進役として閣僚級の重責を担っていたと知ると、ちょっとうれしくなる。