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品川宿の立場茶屋を舞台にした時代小説

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今井絵美子さんの『さくら舞う 立場茶屋おりき』を読む。実は、この本は今年1月に一度読んでいる。情けないことに、巻末の20ページを残した状態で、読んでいた本を紛失してしまい読了できなかったのだ。途中まで読んで傑作と確信したことと、シリーズ第2弾の『行合橋』が発売されたこともあり、もったいないと思いながらも同じ本をまた購入した。

行合橋―立場茶屋おりき (時代小説文庫)

行合橋―立場茶屋おりき (時代小説文庫)

結果として、この判断は間違いではなかった。主人公の立場茶屋(宿場の庶民的な茶屋と評判の料理を供する旅籠を兼ねたもの)のおりきは、何やら人に明かせぬ過去を持ち、そのせいか情に厚く鉄火肌の美人女将。訳ありの男女がおりきの立場茶屋に投宿するが、男は宿を出たきり三日が経っても戻ってこない。残された女おまきは不安で食事ものどを通らなくなる。おりきはおまきの相談に乗るが…。

品川宿を舞台にした時代小説はあまり多くない。そんな中で、品川宿の四季を描くこの作品の価値は高い。立場茶屋のある品川宿門前町を中心に、妙国寺、投込寺の海蔵寺、江戸六地蔵の品川寺などの寺や二十六夜待ちでにぎわう様子も描かれている。

表題作の「さくら舞う」のほか、「涙橋」「明日くる客」「秋の別」「侘助」の連作五編を収録しているが、中でも「秋の別」は秀逸。涙腺が緩いせいもあるが、前回に続いて今回も同じシーンで泣いてしまった。

コメント

  1. だいこん より:

    時代小説の中で市井物を好んで読みます。理流さんのブログは次に読む本を探す時に大変、参考になりますし。私も「さくら舞う」は読みました。「行合橋」もぜひとも
    読んでみたいです。主人公のおりき大好きですね☆