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船宿を舞台にした傑作捕物小説

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樋口有介さんの『船宿たき川捕物暦』を読む。樋口さんの他の作品は未読だが、『ぼくと、ぼくらの夏』でサントリーミステリー大賞読者賞を受賞、以後、青春ミステリーおよび純文学的な青春小説などで活躍されている作家。時代小説ファンとしては、現代ミステリー畑から時代小説に移ってこられることはウェルカムなこと。

船宿たき川捕物暦 (ちくま文庫)

船宿たき川捕物暦 (ちくま文庫)

新装版 ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫)

新装版 ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫)

『船宿たき川捕物暦』は、浪人で小野派一刀流の佐伯道場の師範代真木倩一郎(まさきせいいちろう)の暮らす北森下町の長屋に、幼なじみで白河松平家の藩士・天野善次郎がやってくるところから始まる。前白河藩主の隠し子の噂がある倩一郎に新藩主の定信が会いたがっているという。その夕暮れ、倩一郎は拉致に遭った堀江町の船宿「たき川」の娘・お葉を助ける。「たき川」の主人・米造は、船宿を営むかたわら、江戸岡っ引きの総元締めをかねていた…。

白河家のお家騒動、拉致騒ぎと船宿「たき川」の秘密、定信と田沼意次の対立など、深まる謎、倩一郎の剣と推理、夏から秋にかけての江戸情緒が堪能できる一冊。次回作が楽しみな作品。ちなみに「Webちくま」に『八百善の娘 船宿たき川捕物暦』として連載が始まっているが、第一作めで大きなストーリー展開があるので、一作めから読むことがおすすめ。