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水戸藩の書物同心とは

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出久根達郎さんの『おんな飛脚人 世直し大明神』を読み始めた。前作の『おんな飛脚人』は、NHKで本上まなみさんの主演でドラマ化(「人情とどけます~江戸娘飛脚」)されたほどで、読み味がよかった。久々におんな飛脚人のまどかや清太郎、ふさなど、飛脚屋の十六屋の面々に会えた。

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世直し大明神<おんな飛脚人> (講談社文庫)

おんな飛脚人 (講談社文庫)

おんな飛脚人 (講談社文庫)

NHK金曜時代劇「人情とどけます~江戸娘飛脚」(平成15年1月15日~、全8回放送)

著者の出久根さんは、月島の古書店に勤めた後に、杉並で古書店主になった経歴を持つ。そのせいか、代表作に幕府の御書物方同心を務める東雲丈太郎を主人公にした『御書物同心日記』シリーズがある。『おんな飛脚人 世直し大明神』では、まどかの父親の前職が水戸藩の書物探索方同心であったと明かされる。

御書物同心日記 (講談社文庫)

御書物同心日記 (講談社文庫)

水戸藩といえば、黄門さまこと、二代藩主徳川光圀が全国から学者を集めて、『大日本史』の編纂に着手したことで知られる。光圀は編纂事業に藩費の相当をつぎこみ、この事業は代々受け継がれ、資料である本お収集に、莫大な費用がかかったという。出久根さんは、幕末の水戸藩が財政欠乏に苦しみ、学説の違いによる対立・内部抗争から、優れた若者が斃れ、維新の運動に参加できなかったと指摘している。『大日本史』で尊皇攘夷の思想を説き、全国の志士を奮起させながら、おおもとの水戸藩がその思想で自滅したのは、何とも皮肉である。

著者は、『水戸黄門漫遊記』のご老公の供をする「助さん」「格さん」に当たる人物は、全国を回って書物を集めたり、蔵書家から借りたり、筆写したりした、書物探索方同心の役目をヒントにしたとも示唆していて興味深かった。

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