佐伯泰英さんの『子育て侍』を読んだ。来島水軍流の遣い手で、御鑓拝借で一躍江戸の町の名物人となった、赤目小籐次が活躍する「酔いどれ小籐次留書」シリーズの第七弾である。
- 作者: 佐伯泰英
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2007/02
- メディア: 文庫
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前作で、小籐次は、子連れの刺客須藤平八郎を討ち果たしたが、立ち合いの際の約定で赤子の駿太郎を託されてしまう。今回の読みどころは、赤子を男手で育てることになる小籐次の奮闘振りである。
佐伯さんの他のシリーズ「密命」や「居眠り磐音」では、物語が進むに連れて、主人公の周りのキャラクターがしっかりと描かれていき、ファミリーを作っていく。ファンにはその世界がなんとも心地よくなるわけだ。「酔いどれ小籐次留書」では、主人公が老境に差し掛かる独り者ということで、今後どのように展開していくのかと思っていたが、このように後継者(?)を用意していたとは…。
斬って斬って斬りまくるという死のイメージの強かった「酔いどれ小籐次」が、赤子を育てるということを通して、生も描くことに変わる転換点となる作品といえる。もちろん、胸をすく小籐次のチャンバラシーンはちゃんと用意されているが…。みんな貧しいながらも長屋をあげて、町ぐるみで赤子を育てようとする人情味あふれる江戸の社会に少子化問題解決のヒントがあるようにも思える。