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笑いで世直し、落語に題材をとった時代小説

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南伸坊さんの装画にひかれて、六道慧(りくどうけい)さんの『明烏(あけがらす)』を読んだ。

いろは双六屋 明烏 (徳間文庫)

いろは双六屋 明烏 (徳間文庫)

「明烏」というと、古典落語でおなじみのネタ。

NHK落語名人選 八代目 桂文楽 明烏・心眼

NHK落語名人選 八代目 桂文楽 明烏・心眼

 擦れ違いざまの一瞬が勝負だ。男はなにげない足どりで歩く。駕籠も後ろについている。

「伊之どん。おいら、笑いで世直しするぜ」

 ひとりが放った言葉が心を射抜いた。世直し、この者たちにできるわけがない。だが、世直しとは……。

「おや、浜さんにしては、まともな言葉ですね。世直しけっこう、あたしもお手伝いしますよ」

(『明烏』P.7より)

『明烏』の序章で交わされる主人公の伊之助と、その友人で噺家をめざしている幇間の浜吉の会話。伊之助は、神田鍛冶町の口入屋〈双六屋〉の若旦那で、「わけありの客」を拾ってくる特技があった。口癖は、「人生ってのは双六のようなもの。失敗しても、またいろはから始めればいい。何度でもやり直せるよ」。

その伊之助が今回拾ってきたのは、行方不明の父を探して江戸に出てきたばかりの十三、四の元服前の少年、武田文四郎。途方にくれている文四郎の父探しを手伝うことに……。

浜吉のほかにもその師匠の極楽亭有楽が登場し、物語の中では落語(落とし咄)や小咄が主要な役割を果たして、ユーモアたっぷりの作品になっている。