仁木英之さんの『十六夜長屋日月抄 飯綱颪』を読んだ。仁木さんは、2006年に「碭山の梨」で第十二回歴史群像大賞最優秀賞、「僕僕先生」で第十八回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した、時代小説界、期待の新星である。(うかつなことに、文庫の『飯綱颪』を手に取るまではその事実を知らなかったのだが)
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さて、『飯綱颪』だが、初の文庫書き下ろし時代小説になる。
深川の十六夜長屋に住む、泥鰌漁を生業とする甚六は、ある日川べりで行き倒れの男を見つける。その男は驚くほど巨体で、黒い剛毛に覆われた体の露出部分には血と泥がこびりついていて、鬼を思わせた。恐ろしさにかられた甚六だったが、苦しんでいる姿を見て男を長屋へ連れて行く。長屋の住人たちの介抱によって男は体力を回復するが、一切の記憶を失っていた…。
時代は延享元年(1744)、信州松代藩真田家の藩内の抗争を題材にした、伝奇色豊かな傑作時代小説である。記憶を失った男、山さんと長屋の住人たちとの心温まる交流も描かれていて、読み味がよい。次回作が楽しみな作家の登場である。
コメント
飯綱颪の中で長屋の住民に双子が生まれる描写がありましたが、江戸時代って双子を間引く習慣ありませんでしたっけ?
コメントありがとうございます。確かに武家などでは、双子以上の多産は畜生のようであり、家に災いをもたらすとして忌み嫌われたようです。双子のために、捨てられた密かに育てられた武家の子どもが悲劇をもたらすといったストーリーの時代小説を読んだことがあります。家を守るという意識が薄い、深川の長屋住まいの庶民であれば、双子だからといって間引かれることはないと思います。
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