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「密命」ファミリーに新しいヒーローが

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佐伯泰英さんの『無刀 密命・父子鷹』を読んだ。タイトルから連想されるとおり、今回、金杉惣三郎と清之助の父子は、柳生新陰流の故郷、柳生の地の正木坂道場に滞在する。

無刀―密命・父子鷹〈巻之十五〉 (祥伝社文庫)

無刀―密命・父子鷹〈巻之十五〉 (祥伝社文庫)

実は、物語を読むまで気がかりなことがあった。主役の二人が江戸を留守にするということは、今回、江戸が舞台になることは少ないのかなと思っていた。ところが、佐伯さんは、鍾馗の昇平という今まで脇役だった若者を江戸の主役に抜擢することで、難問をあっさり解決してしまった。

「密命」シリーズは享保年間を舞台にしているために、町火消の活躍ぶりが再三描かれている。江戸町火消のめ組の頭取辰吉や若頭の登五郎、その女房で札差冠阿弥の一人娘お杏など、魅力的な登場人物が出てくる。鍾馗の昇平は、身丈六尺三寸、体重二十貫を超える巨漢の火消しの梯子持ち。金杉惣三郎を人生と剣の師と慕い、年来、車坂の石見銕太郎道場で剣術の猛稽古に励んできた。長身大力の昇平の面打ちは、「三年殺し」と異名をとるほど。

その昇平の身に事件が起こる。事件を通じて、「密命」ファミリーの結束が固まっていくのが見どころの一つ。剣豪小説でありながら、家族というものを考えさせられるシリーズでもあり、その辺りの心の触れ合いの心地よさが魅力になっている。