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貧乏剣術道場の師範代

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乾荘次郎さんの『妻敵討ち 鴉道場日月抄』を読み始めた。乾さんには、鳥居耀蔵の晩年を描いた短篇を収録した『孤愁の鬼』という作品集がある。注目している時代小説作家の一人だ。

孤愁の鬼 (広済堂文庫)

孤愁の鬼 (広済堂文庫)

小石川傳通院の近くの小石川金杉水道町に、柳花館(りゅうかかん)という剣術道場がある。唐の詩人・蘇東坡の言葉「柳は緑で、花は紅い」から取った名で、ただそれだけのことをそのまま受け止めることが大切だという意味がある。道場主は、広川柳斎だが、五年前に腹に腫塊ができてから寝込んだまま。柳斎の代わりを務めているのが師範代の高森弦十郎だ。

柳花館の庭に大きな楠が二本生えていて、そこにいつも鴉が群れていることから、鴉道場と呼ばれている。門弟数は二十人に満たず、しかも月謝にあたる束脩(そくしゅう)を取らないために、貧乏道場だ。その柳花館の門弟とその姉が胡乱な浪人に付けねらわれていることを知った弦十郎は二人を匿うが……。

妻敵討ち(めがたきうち)とは、武士の妻が不義密通の末に別の男と駆け落ちした場合、武士である夫が二人を追って成敗すること。妻を寝取られることは武士としては不名誉なことで、妻敵討ちを果さないと復職できなかったという。