獏不次男さんの『津軽隠密秘帖』を読了。弘前藩津軽家は、津軽為信のよって南部氏から独立する形で興された。政治の中心から外れた北端の藩のせいか、これまで時代小説で取り上げられることは少なかった。
- 作者: 獏不次男
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2005/08/10
- メディア: 単行本
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しかし、本書を読んで、波瀾万丈で、一筋縄ではいかないユニークな大名家であることがわかった。船橋騒動と呼ばれる御家騒動の末に二代藩主についた信牧は家康の養女満天姫を正室に、石田三成の娘・辰子姫を側室にしたとか。三代信義は51人の子どもを作り暗君といわれたが、死後、家臣の4人が殉死したとか。四代信政は名君と呼ばれ、藩の全盛期を築き上げ、シャクシャインの反乱鎮圧や日光山宮普請役などで功績を上げたが、晩年烏山藩那須家の御家騒動に巻き込まれたとか。いろいろなエピソードをもっていて、時代小説のネタの宝庫である。
さて、『津軽隠密秘帖』では、幕府隠密のほかに、元の老中土井利房が率いる〈亡者〉という名の忍び、津軽信義の子・可足が率いる津軽忍者群〈裏九文字〉〈早道之者〉、柳生烈堂が率いる裏柳生が、幕府の最高機密「土芥寇讎記」をめぐって暗闘を繰り広げる。スケールの大きな伝奇小説である。続編を読んでみたいと思った。