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もっと読みたかった幽霊丸の話

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笹沢左保さんの遺作である『海賊船幽霊丸』を読み終えた。未完で、最終章を森村誠一さんが補筆したことでも、注目される海洋時代小説である。

関ヶ原の合戦から九年、伊予水軍の主流・来島海賊衆を率いた湯野新八郎は、瀬戸内の無人島で八割がた完成した軍船を見つけた。徳川幕府の支配を嫌い、自由を求めた来島海賊衆は、この船を幽霊丸と名付け、南方の大海原を目指して、帰らぬ旅に出た……。

幽霊丸は、全長六十九尺(約21メートル)、幅十五尺(約4.6メートル)、帆柱の高さは船底から六十尺(約18メートル)の船体で、真っ黒な十六反の帆の和船。日本水軍が戦艦としていた安宅型軍船と、巡洋艦の役目を果した関船とを足して二で割ったような造りと規模の船である。前方に向けて大筒が備え付けてあり、防楯は厚さ六センチの楠の板に、要所を黒い鉄板で固めてある。まさに、海賊行為をするための船であった。

お頭は、新八郎のほかに、双生児で身長は同じだが、その風貌や性格は正反対の弟の新九郎が務めた。新九郎は、生まれて半年後に、長崎の貿易商小林宗右衛門の養子となり、朱印船に乗り海外への航海を経験していた。そして、新九郎には若い娘の連れがあった。幽霊丸の航海は最初から多難が予想された……。

新八郎は、ニヤッとした笑いを浮かべ、シニカルではなく、いつも冷静さを保っている。新しいキャラクター設定の主人公である。

第一章 海神は女を見ていた

第二章 使者は孤島に消えた

第三章 船霊が暗雲を呼んだ

第四章 潮流に血が分れた

第五章 海賊は方舟に乗った

章のタイトル付けが「木枯し紋次郎」シリーズを彷彿させる。未完の作品を森村誠一さんがどのように決着付けるか興味深かった。読んでいてまったく違和感を感じなかった。ただ、笹沢さんが存命なら、この物語のパターンで、もう少しいろいろな話が読めたかもしれない可能性があるので、少し残念な部分もある。久々に、「木枯し紋次郎」を読み返してみたくなった。

海賊船幽霊丸 (光文社文庫)

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