上田秀人版の『吉原御免状』

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隆慶一郎さんの『吉原御免状』を初めて読んだときのコーフンと感動は、未だにうまく表現できない。類稀な想像力の昇華、第一級のエンターテインメントとロマンあふれる上質の文学性が堪能できる、伝奇時代小説のもつ懐の広さ、神髄をそこに見た思いがした。

さて、上田秀人さんの『熾火(おきび)』は、「勘定吟味役異聞」シリーズの第二弾である。『吉原御免状』より五十年ぐらい後の時代、正徳二年ごろを描いている。

前作『破斬』で、小判改鋳をめぐる不正にメスを入れ、勘定奉行荻原近江守を追放した新井白石は、その勢いをかって幕政を改革しようと勘定吟味役の水城聡四郎に新たな命令を下す。聡四郎は、白石の強引な手法に疑問を感じながらも奔走する。そんな時、吉原から一万二千両にのぼる疑惑の金が幕府に流れているという手控え(メモ)が白石の手にわたる……。

吉原の存亡をかけた闘いに、豪商紀伊国屋文左衛門や実力者柳沢吉保が絡み、物語はもつれていく。迫り来る悪漢たちに、聡四郎の一放流の剣が冴えるエンターテインメント時代小説。遊廓を舞台にしたこの物語は、上田さんの隆慶一郎さんの名作へのオマージュともいうべき作品かな。敵も強力であり、今から、次回作が楽しみになってきた。

吉原御免状 (新潮文庫)

吉原御免状 (新潮文庫)

熾火 勘定吟味役異聞(二) (光文社文庫)

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破斬―勘定吟味役異聞 (光文社時代小説文庫)

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