平岩弓枝さんの「御宿かわせみ」シリーズの第31巻、文庫の最新作『江戸の精霊流し』を読んだ。
「かわせみ」を読んでいると、江戸の四季が抒情的に描かれていて、現在の東京の喧騒を忘れて、しばし和める時間がもてる。今回の巻では、お盆の精霊流しのように、はかなくせつない女性を描く表題作が見事。「北前船から来た男」も、このシリーズらしい結末のつけ方で印象に残る話の一つである。
さて、「野老沢の肝っ玉おっ母あ」という話が収録されていた。「かわせみ」のキャラクターで、最近その存在感を増してきた女中のお石の家族をめぐる話だ。
「野老沢」と書いて「ところざわ」と読み、今の「所沢」のことだとわかった。その名の由来は、『伊勢物語』のモデルで、歌人の在原業平がこの地に差し掛かり、「野老(ところ)」という山芋が群生している沢を見ながら「この地は野老の沢か?」と話したことを土地の人がこれを聞いて土地の名を野老沢(ところさわ)と呼ぶようになったということだ。幕末までは「野老沢」と表記されていたという。
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単行本のほうは、江戸最後の作品『浮かれ黄蝶』がリリースされたところだが、この秋からは「かわせみ」の明治編が始まるという。るいや東吾、源三郎、通之進、宗太郎ら、「かわせみ」ファミリーがどんなふうに維新を迎え新しい時代を生き抜いていくのか、今から楽しみである。
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コメント
御宿かわせみも「浮かれ黄蝶」でしばらくお休み 何度も読み返して江戸の季節感、風物が心を癒してくれました。秋の明治編を楽しみに待ちましょう。