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平賀源内の生涯を振り返る時代長編

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諸田玲子さんの『恋ぐるい』を読んだ。単行本刊行時(2002年、新潮社)のタイトルは、『源内狂恋』だったもの。女性の情愛を描くことでは、定評のある諸田さんがどんなふうに江戸の才人・平賀源内を描くのか興味津々だった。

平賀源内というと、小学生のころ(1971~1972)にNHKテレビで見た「天下御免」(早坂暁脚本)の原初体験のせいか、山口崇さん演じる颯爽とした源内像にあこがれ、江戸と現代がクロスオーバーするような新感覚の時代劇に、毎週楽しみに見たことを記憶している。

そのせいもあって、今まで時代小説に出てくる平賀源内のイメージについていつも違和感を感じていた。

『恋ぐるい』の物語は、平賀源内が癇癪が高じて、米屋の次男で門弟の久五郎と喧嘩騒ぎを起こした末に、斬殺してしまい、小伝馬町の牢に収容された日から始まる。源内は、喧嘩の際に左の脇腹を刀傷を負い、鬱屈して自暴自棄になっていた。揚屋と呼ばれる大牢で、そんな源内を面倒をみるのが、患家の人妻とねんごろになった末に、その亭主を斬殺し、収容されていた老医師・芳玄だった。牢内で痛む脇腹を抱えてまどろむ源内の記憶は、二十七年前の初夏、郷里の讃岐国志度浦に帰っていた……。

死罪を覚悟しながらも、芳玄に励まされて、獄中で自身の心の思いを書き残そうとする源内。回想と妄想で身悶えながらも、頭に浮かぶのは、一人の女性・野乃だった……。

本草学者、戯作者、浄瑠璃作者、山師、絵師その他もろもろの肩書をもち、エレキテルを作ったり、源内櫛や金唐革の小間物を作って売ったりしたり、八面六臂の活躍をしながら、逆にどこか一流になりきれない甘さをもった不思議な人物。この作品は、彼の不思議な生涯を、源内に仕える下女の視点から描くことで解き明かした傑作。新しい源内像が再構築できた気がする。

諸田玲子オフィシャル・ウェブサイト

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恋ぐるい (新潮文庫)

恋ぐるい (新潮文庫)