会社の後輩のEさんより、「週刊文春」5月11日号に掲載された「歴史小説、時代小説、偏愛セレクト50-10人の通がお薦め」の記事を教えてもらって読んだ。
山本一力さん、関川夏央さん、江夏豊さん、皆川博子さん、北方謙三さん、森まゆみさん、池上冬樹さん、野口武彦さん、中野翠さん、佐藤忠男さんの10人が、「江戸」「藤沢周平」「剣豪」「明治」などのテーマで、5作品ずつ作品を選んでいる。
選ばれた作品を見ると、偏愛というとおり偏りがあって面白かった。ただ、司馬遼太郎さん、池波正太郎さんらの、既に評価が定まっている安心な作品が順当に選ばれているのをみると意外性に欠き、やや残念である。
そんな中で注目したのは、皆川博子さんが「綺想」というテーマで選んだ5編。
(1)『日輪』(横光利一著・岩波文庫)
(2)『眉輪』(野溝七生子著・展望社)
(3)『カストラチュラ』(鳩山郁子著・青林工芸舎)
(4)『1809』(佐藤亜紀著・文春文庫)
(5)『安徳天皇漂海記』(宇月原晴明著・中央公論新社)
ラインナップを見て頭をガツーンと殴られた感じ。いずれの作品も読んだことがなく歴史・時代小説の懐の深さを痛感させられた。伝奇的な作品や幻想的な時代小説の名作を発表されている皆川さんらしいクセモノぶりだ。
とくに、(2)と(3)はタイトルを聞いたこともなくググッたほど。(2)は、仁徳天皇の皇子・大草香皇子の子、眉輪王を主人公にした歴史長編。大正14年に執筆されたもの。(3)は中国清王朝をモデルにしたコミックだそうだ。
@spangle/鳩山郁子オフィシャル・サイト/「カストラチュラ」
(4)はナポレオン暗殺未遂事件をテーマにした作品。(5)は壇ノ浦から鎌倉にかけてを安徳天皇のその後を描いた物語らしい。皆川さんのすごいのは、若手の作品にもきちんと目配りされているところ。ちなみにお二人とも、日本ファンタジーノベル大賞の受賞者の実力派である。
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