『あやめ横丁の人々』を読み始める。宇江佐真理さんらしい、江戸情緒たっぷりの歯切れのいい語り口が楽しい。
婿入りの祝言の席上で、昔の映画『卒業』(ダスティン・ホフマンが出ていたやつ)のように、妻を恋人に奪われた大身旗本の三男坊、紀藤慎之介。逆上して間夫を斬り捨て新婦を自害に至らしめた彼は、婚家に命を狙われることになり、本所「あやめ横丁」に匿われることに……。
御竹蔵の近くの堀に囲まれたこの町は、場所も住人もみな何やら訳あり。世間知らずのお坊ちゃんが、この不思議な町の新しい住人になることで、社会勉強をしながら成長していく、市井小説であり、一種の青春小説でもある。
宇江佐さんは出身も現在お住まいになられているのも函館だそうだが、その作品からは土地鑑や言葉、事物の紹介から、江戸の住人ではと思わせる。この作品の舞台は架空の場所だが、本所の御竹蔵と馬場と亀沢町、回向院というヒントから、現在の両国駅から江戸東京博物館周辺ではないかと思われる。
最近、このあたりを散策したばかりなので、ますます身近な感じがする。ページをめくるのが楽しい作品だ。さて、続きを読もう。
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