通勤電車の中で、乙川優三郎さんの『武家用心集』を読み始める。乙川さんは、この短編集で第10回中山義秀文学賞を受賞している。武士の(家の)生活や生き方をテーマに描いた武家ものとか、士道小説という。藤沢周平さんの『蝉しぐれ』や『たそがれ清兵衛』などがまず思い浮かぶ。
『武家用心集』は、藩内の政争や肉親のしがらみ、世間のうわさや嫉妬、身にかかる諸々の中、生きる上で一番大切なのは何かを問いかける、8編の短篇を収録している。
乙川さんが第7回時代小説大賞を受賞されたころ、「第二の藤沢周平」とか評されることが多かった。そのときは藤沢さんとは違う別の資質を強く感じたが、今回は『田蔵田半右衛門』や『九月の瓜』『邯鄲』など、不思議と、読み進めていくうちに、藤沢さんの世界とオーバーラップするものを感じている。題材のせいだろうか。作者のまなざしのせいだろうか。もう少し読み進めながら、考えてみたい。
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