安部龍太郎さんの『生きて候』を読み終えた。「美しく己の命を使い切れ!」「生き急いでも、死に急いでもならぬ」という養父・倉橋長右衛門の遺した言葉を胸に、戦国から江戸初期を武辺に生き、義に生きた男の半生を描く傑作歴史時代小説。
政重は、家康の名参謀・本多正信の次男(長男は本多正純)にして、槍奉行倉橋長右衛門の養子だが、故あって徳川秀忠の近習・岡部庄八を斬り捨て徳川家を出奔する。意地と野心を胸に慶長の役(秀吉の二度目の朝鮮出兵)に身を投じる。前田利家の密命を帯びて朝鮮半島に渡った政重が見たものは……。
本多政重は実在の人物だが、安部さんが描くところの政重は武辺者であり、スーパーヒーローだ。武芸の達人であり、戦国時代の遺風を持った義に厚い人物として、とにかくかっこいい。なにしろ、徳川家の先手組の槍組の代表として、鉄砲組の代表と馬上で決闘するシーンから物語は始まるほど。
隆慶一郎さんの『一夢庵風流記』に登場する、豪勇無双のかぶき者・前田慶次郎利益を想起させる。そういえば、どちらも前田家に深く関係する人物という共通点がある。
本多政重は、『本多の狐』や『竜の見た夢』(いずれも羽太雄平さんの作品で、絶版で入手困難)でも描かれている。また、『蜻蛉剣』にも政重の子孫が登場し、政重の話が出てくる。今最も気になっている人物の一人だ。
- 作者: 安部龍太郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/01/20
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 3回
- この商品を含むブログ (9件) を見る
- 作者: 安部龍太郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/01/20
- メディア: 文庫
- 購入: 1人
- この商品を含むブログ (3件) を見る
- 作者: 隆慶一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1991/09/30
- メディア: 文庫
- 購入: 6人 クリック: 144回
- この商品を含むブログ (78件) を見る
- 作者: 隆慶一郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1992/12/15
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 42回
- この商品を含むブログ (44件) を見る
- 作者: 羽太雄平
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1995/01
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (3件) を見る
- 作者: 羽太雄平
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1996/08
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (1件) を見る
- 作者: 上田秀人
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2005/10
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (4件) を見る
コメント
父の名前をググッてみたら辿り尽きました
『本多の狐』や『竜の見た夢』って入手困難なんですか?
我が家にイッパイあります.....。
羽太雄平さんの時代小説は伝奇性があって、良質なエンターテインメント作品が多くてファンです。『本多の狐』は第2回時代小説大賞(1991年)受賞作で、『竜の見た夢』はその続編。現在、絶版(もしくは品切れ増刷予定未定)状態です。時代小説ブームの今、復刊したら、もっと売れると思います。