荒崎一海さんの『闇を斬る 四神跳梁』を読んでいたら、白魚漁(しらうおりょう)を描写したシーンが出てきた。
薙刀の稽古を終えた雪江に、真九郎は、このまま風が吹かぬようなら、あとで白魚漁を見にいこうと誘った。
雪江が、瞳をかがやかせてほほえんだ。
(P.70)
白魚漁は、十一月から三月までの夜間に行われる。佃島の漁師は、漁についての特権を与えられていて、海面近くの篝火に寄ってくる白魚を網ですくって獲る。それを将軍家の食膳用に献上したという。
佃島の漁民たちは、慶長十七年(1611)に徳川家康の招きによって摂津国西成郡佃村から移住してきた。佃島は今は陸続きだが、江戸時代は鉄炮洲の舩松町との間を渡し舟で結ばれていた。
白魚漁の見物は永代橋を渡りながら行われた。橋の上で長く立ち止まるのは禁じられていたので、人々は海面を揺曳する漁火の美しさに目をやりながら、ゆっくり行きかったという。さしずめ今なら、レインボーブリッジからの夜景を見るような感じだろうか。
江戸の漁師が活躍する時代小説には、『白魚の陣十郎』がある。
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