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意外に明るい? 江戸の月

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時代小説を読んでいると、「月夜だから提灯はいらない」とか、「月のない真っ暗な夜だった」とか、月の明るさに触れた描写に出くわすことがある。

また月に関しては、十五夜ばかりでなく、「十六夜(いざよいと読む。十五夜の次の夜のこと)」や「立待月(たちまちづき。十六夜の次の夜)」「居待月(いまちづき。立待月の次の夜)」「臥待月(ふしまちづき。居待月の次の夜)」というような表現もある。月の出が一日一日遅くなっていく感じを表しているそうだ。

小杉健治さんの『二十六夜待(にじゅうろくやまち)』は、7編の捕物話を収録した短篇集。単行本で刊行されたときは、それぞれの話には、別々の岡っ引きが登場することから『七人の岡っ引き』というタイトルが付けられていた。文庫化にともない、その中の一編の題名がタイトルにもなった。

表題作の「二十六夜待」は、元盗賊だった二人の男が十五年後の「二十六夜待」の日に会おうといって別れ、それぞれ別の暮らしを送った末に、十六年後の「二十六夜待」に出会ったことから、事件が起こるというお話。七月二十六日は二十六夜待で、この日の月の出には、阿弥陀、観音、勢至(せいし)の三尊の仏体を拝むことができるという言い伝えがある。「月のうさぎ」さんのHPに二十六夜待の画像が掲載されている。

この夜は、商家の人間は月待ちで、海岸や高台の場所など月見に適した場所を繰り出した。そのため、その留守を狙って盗賊も跋扈した。月見の名所としては、深川洲崎海岸や湯島天神、神田明神などがあった。

今とは違い、日が沈むと行灯がメインの光源(ロウソクは高価だった)だった昔、月の明かりは何ともありがたいものだったのだろう。

平岩弓枝さんの「御宿かわせみ」シリーズにも「二十六夜待の殺人」という話が出てくる。話に関連性はないが、どちらの本の装画も蓬田やすひろさんが担当されている。

二十六夜待 (祥伝社文庫)

二十六夜待 (祥伝社文庫)