乙川優三郎さんの『冬の標(しるべ)』を読み始めた。乙川さんは、『霧の橋』で第7回時代小説大賞(平成9年)を受賞してデビューして以来、文学性の高い良質な時代小説を発表し続ける作家の一人である。
デビュー当時は、マスメディアから「第二の藤沢周平」とか言われることが多かったが、ご本人は山本周五郎さんの作品をよく読んでいたというようなことをおっしゃっていた。
第127回直木賞受賞作の『生きる』をはじめ、人として生きる意味を考えさせられる作品が多い。『冬の標』は大番頭の娘として生まれ、小禄の寡婦になってしまった女性が女流画家として再生する感動の物語。
作者はどんな希望を読者に与えてくれるのか。少し心が疲れ気味な今、物語の世界にしばし浸ってみたい。
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