前日に続いて『天下騒乱 鍵屋ノ辻』を読んでいる。荒木又右衛門の「鍵屋の辻の決闘」を幕藩体制の確立とあわせて描く傑作である。
「鍵屋の辻の決闘」について少し書いてみたい。
岡山藩藩主池田忠雄の寵愛の小姓渡辺源太夫が藩士河合又五郎に殺害し、江戸に逃亡し旗本安藤治右衛門に匿われる。河合又五郎の父半左衛門は元・下総小見川藩安藤家(治右衛門の遠戚)の藩士だったが、朋輩を斬って後、門前を通りかかった池田忠雄の行列に逃げ込み身柄を預けた。因縁がある池田家と安藤家の対立は、池田忠雄には姻戚関係のある伊達政宗や蜂須賀家政が後援し、安藤治右衛門は大久保彦左衛門ら旗本一統が支援する。さながら外様大名対旗本の意地の張り合いによる抗争に変わっていく。
成立したばかりの幕藩体制を揺るがしかねない危機に、年寄(老中)の土井利勝と年寄見習の松平信綱、惣目付柳生宗矩が立ち向かう。かくして物語は単なる決闘(仇討ち)にとどまらない江戸初期を代表する事件に発展する。
決闘へ至るサスペンスだけでなく、江戸初期の時代の空気とこのスケール感がきっちり描けていることがこの作品の魅力である。それは、「鍵屋の辻の決闘」と並ぶ、江戸を代表する仇討ち、赤穂浪士の討ち入り事件を新感覚で描いた『四十七人の刺客』の作者池宮彰一郎さんならではというところか。
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