畠中惠さんの『ぬしさまへ』を入手する。日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞した『しゃばけ』に続く人気ファンタスティック捕物シリーズ第2弾。
このシリーズの最大の魅力は、主人公の廻船問屋兼薬種問屋の長崎屋の若だんな一太郎を助ける妖(あやかし)たちのユーモアを交えた言動である。病弱の若だんなを助ける手代の佐助と仁吉は、妖怪の犬神(いぬがみ)と白沢(はくたく)で、病弱で友だちの少ない一太郎の兄や(にいや)代わりも務める。
屏風のぞきや獺(かわうそ)、野寺坊(のでらぼう)に、鈴彦姫、濡女(ぬれおんな)、鳴家(やなり)という家に居付く小鬼たちまで、いずれも明るく、みんな一太郎にめっぽう甘い。そんな楽しい物語がこれから始まる。楽しみだ。
プロフィールによると、作者の畠中さんというと、以前に漫画家をされていたそうで、キャラクターが映像的なのもうなずけるところ。さらに、推理小説家として活躍され、砂絵のセンセーが活躍する「なめくじ長屋捕物さわぎ」シリーズで知られる、都筑道夫さんの小説講座に通って小説家デビューを目指されていたそうだ。
奇想天外なシチュエーション、集団のキャラクター造形や探偵役の推理方法など、都筑作品の影響が感じられて、かつての都筑ファンの一人として、畠中さんの活躍ぶりがうれしいところ。
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きまぐれ砂絵―なめくじ長屋捕物さわぎ (光文社時代小説文庫)
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