北方謙三さんの『黒龍の柩』を読んでいる。土方歳三を主人公とした時代小説だが、土方の歴史観が現代的で面白い。個人的には、大政奉還以後の土方の行動と箱館での最期に少し引っかかりを感じていた。新選組に男の美学を求めて散っていった近藤勇とは対照的に。
戦いを求めて、京、伏見、大坂、江戸、宇都宮、会津、仙台沖と転戦して行った土方が、なぜ箱館戦争で銃弾の前に飛び出して行ったのか? 『黒龍の柩』を読んでいるうちに、土方の考えていたこと、夢の一端がわかった気がする。
土方にとっての山南敬助の存在、そして、勝海舟、徳川慶喜、坂本龍馬、小栗忠順、村垣範正との関係。その裏返しで描かれる、西郷吉之助(隆盛)の存在。新解釈やサプライズがあって興味がつきない。
物語の中でも触れられていたが、西郷隆盛は顔を知られることを極端に恐れていたようである。上野の山の銅像が本人と似ても似つかないものであるというのは、よく言われていることである。生前の写真もほとんど撮影されていない。そういえば、風野真知雄さんの時代小説に、西郷の写真をめぐるミステリーを描いた『西郷盗撮』という作品もあった。なぜ、西郷は顔を人目から隠すことにこだわったのだろうか? とても気になる謎の一つだ。
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