『ふたり道三』を読了する。この本を読んで時代小説ファンで良かったとしみじみと思った。ジェットコースターのようなストーリー展開で、ヤマ場の連続。作者の旺盛なサービス精神に感謝。
司馬遼太郎さんの『国盗り物語』で人物像が出来上がった観のある、斎藤道三を主人公に据えながら、伝奇小説やチャンバラ小説、青春小説の要素をふんだんに盛り込み、宮本昌孝ワールドを作り上げている。
物語は、後鳥羽上皇ゆかりの刀鍛冶・櫂扇派九代目隠岐允を鳥葬している嫡男おどろ丸が、無量斎率いる裏青江衆に襲撃されるシーンから始まる。裏青江衆は、備中の刀鍛冶青江派が自派を守るために抱える暗殺集団である。道三の美濃盗りとは、まったく関係のなさそうなところから、物語は展開していく。
タイトルにあるように、この作品は、「六角承禎条書写」という史料に書かれた、斎藤道三の所業といわれていたことが実は親子二代でなされていたということをヒントに描かれている。しかし、「ふたり」というのが必ずしも親子ばかりでないように思われる。いろいろな組み合わせの「ふたり」が道三の美濃国盗りに力を尽くしていて、その人間模様も面白い。個性的で何とも魅力的な敵役たちも含めて。
- 作者: 宮本昌孝
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/09
- メディア: 文庫
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