佐伯泰英さんの『居眠り磐音 江戸双紙 夏燕ノ道』を読み終えた。深川六間堀に住む浪人坂崎磐音を主人公としたシリーズは快調なペースで巻を積み上げて第十四弾になる。今回の読みどころは、十代将軍家治の日光社参をメインに描いたところ。
日光社参は徳川家康が祀られている日光東照宮に将軍が参詣すること。幕府の威信回復を賭けた一大行事で、供の数は御三家、大名諸侯、直参旗本から助郷の人間まで入れると、延べ四百万人、馬三十万匹を数える一大イベントだ。重要性の割には、時代小説では正面から取り上げられることがほとんどなかったので、本書はとても興味深かった。
今回、磐音は、日光社参を金銭面から支える両替商今津屋の後見として、日光に向かう老分番頭由蔵らに随行する。その一方で、磐音には、秘密裡に日光に同道させる世子大納言家基の護衛というもう一つ重大な使命が与えられた……。
初登場の世子家基が颯爽とした若武者ぶりでかっこいい。幻の十一代将軍ということだが、シリーズの今後でどのように描かれていくか楽しみなキャラである。
「密命」シリーズの主人公金杉惣三郎がどんどんスケールアップしていくことには気がついていたが、本シリーズの坂崎磐音もここにきて、一気に偉くなり、強くなった。もっとも宮戸川での鰻割きの仕事は続けていくようだが……。この先どういう展開になるか気になるところ。
- 作者: 佐伯泰英
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2005/09/01
- メディア: 文庫
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