勘定奉行と紀伊国屋文左衛門

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破斬―勘定吟味役異聞 (光文社時代小説文庫)』は文句なしに面白かった。サブタイトルの勘定吟味役とは、天和二年(1682)、幕府の緊迫した財政に頭を痛めた五代将軍綱吉が創設したもので、勘定奉行所における目付のようなもの。出納を監査し、恣意あるいは無駄な支出を見張る。老中支配で定員は決めらておらず、五百石高の旗本が命じられ、役料三百俵が支給された。

主人公水城聡四郎(みずきそうしろう)は四男坊で部屋住みで、学問や算勘よりも剣術(一放流)の稽古に明け暮れで青春時代を過ごしてきたが、長兄の病死、次男・三男が養子に出たこともあり、勘定方の筋である水城家の家督を継いだ。六代将軍家宣の懐刀である新井白石によって、勘定吟味役に抜擢される。

聡四郎は、下僚の太田彦左衛門の教示で、勘定奉行に荻原重秀が就任した元禄九年以降の普請修復に疑念を持ち、探索を始めた。江戸の町を歩き、普請工事を見て回る中で、人入れ屋(人材派遣業)の相模屋伝兵衛、紅の父娘と知り合いになった…。

面白い時代小説は、物語が面白い、時代背景の解説が適切、主人公から脇役まで人物造形が見事など、の要素が挙げられる。この作品はチャンバラと政争だけでなく江戸の経済についてまで描かれていて、現代に通じるところもあって興味深い。

勘定奉行荻原重秀のほかに、豪商紀伊国屋文左衛門(紀文)が聡四郎の前に大きな壁として立ちはだかる。敵役が強ければ強いほど、主人公が光り輝く。この本が読了感がいいのは、そのせいかもしれない。紀文というと、みかん船の話など伝説が多い割りに、史実が少ない印象があったので伝奇小説向きのキャラクターかもしれない。

コメント

  1. 雲の絶間 より:

    理流さん、おひさしぶりです。
    ひさびさにクリックしたらブログを始めていらしたんですね。
    これからゆっくりと理流ワールドを拝見させていただきます。
    近頃は小説を読むことも遠ざかっていたので、また読み始めてみます。

  2. 理流 より:

    雲の絶間さん、本当にごぶさたしています。昔の「時代小説SHOW」を知っている方から、コメントをいただきありがたさとともに懐かしさを感じています。ブログの方がコンテンツやデザインについて制約があるために割り切りができて、更新の負荷が少ないので、たんだんこちらの比重が大きくなってきました。今後も、面白い時代小説を1冊でも多く紹介したいと思います。これからもよろしくお願いします。