帰省先で、佐藤雅美さんの『揚羽の蝶 半次捕物控(上) (講談社文庫)』『揚羽の蝶 半次捕物控(下) (講談社文庫)』を一気に読了する。第1作の『影帳 半次捕物控 (講談社文庫)』と第3作の『命みょうが 半次捕物控 (講談社文庫)』を読んでいたが、中抜けで第2作目が読みもらしていた。そこで、この休みを使って読むことにした。読み始めたらとにかく面白くて、一気に上下巻を最後まで読み通した。
佐藤雅美さんの作品は、いずれも時代考証、とくに社会や経済に関する背景知識の解説が丁寧で、江戸に関する知識が深まるところが魅力であった。このシリーズは、主人公の岡っ引の半次が、リアルっぽい生活感があり、粋でちょっと意地っ張りな江戸っ子ぽいキャラクターもたのしい。
大店の娘にしびれ薬を飲ませ、貞操を奪った「いが茄子男」を見つけ出せと、御奉行からの密命を受けた岡っ引平次は、岡山松平家(池田家)様付きの足軽小者が犯人らしいとの情報から参勤交代に加わって、東海道を抜け備前岡山まで殿の荷を担ぐことに。だが出発早々、神奈川宿で、殿の御煮嘗役(毒味役)が毒殺され、半次に嫌疑が……。
この『揚羽の蝶』は、上下巻の長編ということで、捕物、御家騒動、道中物の要素が織り込まれて、ストーリー展開にワクワクさせられる。「いが茄子」は曼陀羅華(まんだらげ)や朝鮮朝顔、喘息煙草とか呼ばれる、麻痺や昏睡作用がある薬草のこと。タイトルの「揚羽の蝶」は、因幡鳥取三十二万石の池田家と備前岡山三十一万五千石の池田家の家紋。