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岡っ引の仕事、引合(ひきあい)

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佐藤雅美さんの『命みょうが 半次捕物控 (講談社文庫)』を読んだ。岡っ引の生活実態に迫り、リアリティがあって面白い。解説で文芸評論家の末國善己さんが指摘してあるように、主人公の半次は人情派のヒーローでない、きれいごとばかりを言っていない岡っ引だ。

冒頭で、お盆が近づき出入先などから入ってくる付け届けの祝儀がいくらになったかソロバンで勘定し、日ごろもたらしてくれる者たちに渡す二朱銀を祝儀袋に詰めて糊付けする作業にとりかかる。その挙げ句、半次は岡っ引というのにまるで商人だと苦笑する。

そして、もっとも大きな収入源を「引合をつける」ことと「引合を抜く」こととして描いている。

 盗っ人は捕まると、あの店で下駄をこの店で手拭をと、いいかげんなのをひっくるめて盗みましたと白状し、岡っ引は一軒一軒訪ねてまわって、そのことを告げた。これを引合をつけるといった。

p.18

 引合をつけられると、町奉行所から呼び出しがかかり、店主は当日、町役人(ちょうやくにん)に同道してもらって朝から奉行所に出向かなければならず、それに丸一日とられた。しかも、弁当を用意したり、帰りには付き添いの町役人らをもてなし、謝礼も包まなければならなかった。

 つまらないことに時間と金をかけないために、引合をつけられると、つけられた者は知り合いの岡っ引を通じて、引合をつけた岡っ引に相応の対価を支払い、何も盗まれなかったことにしてもらった。これを「引合を抜く」という。作者は、引合を抜いてもらう相場を一分(=一両の四分の一)と記している。主人公の半次は下っ引を四人連れており、月七両二分を稼ぐために、毎日一つを目標に引合をつけることを目標にしていた。