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旗本と御家人の違い

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旗本のことを調べたくて、小川恭一さんの『江戸の旗本事典 (講談社文庫)』を読み始めた。著者の小川さんは、時代考証家の三田村鳶魚(みたむらえんぎょ)さんの最後のお弟子さんである。

時代小説を読んでいると、旗本と御家人の違いや、番方(武官)と役方(文官)の役職名とその違い、給与、昇進など、よくわからないことがいろいろ出てくる。必要最小限のことは作品中で説明されることもあるが、説明が簡潔すぎてわかりづらかったり、作者も資料の孫引きだったり、間違ったものを引用していたりで、???ということがあった。

この本では、記録や写本などの一次史料から丹念に掘り起こした事実を、わかりやすく説明してくれて、旗本に関するいろいろな疑問が氷解しありがたい。

たとえば、御家人との違いについて、

(1)家禄二百俵以上の家

(2)御目見(おめみえ)以上の家

(3)旗本は軍事用語で、幕府の小性組・書院番・新番・大番・小十人の五番士を指す

などと、定義する説が流布されている。しかし、著者の調べによると、(1)については規定に当てはまらない事実が確認されたり、(3)については根拠となる記録自体が疑わしかったりで、以下の定義が無難ということだった。

家禄万石以下で、代々、家として将軍家への御目見を許される家柄を持つ家。

この本のようなわかりやすい読み物に出会っていないと、作家の方といえどもなかなか旗本のことを正確に描くことは難しいと思った。

江戸の旗本事典 (講談社文庫)

江戸の旗本事典 (講談社文庫)