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藤沢周平作品を想起させる

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鷺の墓 (時代小説文庫)』を読了する。作者の今井絵美子さんは、2003年に「小日向源伍の終わらない夏」で第10回九州さが大衆文学大賞・笹沢左保賞を受賞した新進気鋭の時代小説作家。本書が初の文庫書き下ろし作品。

瀬戸内の一藩(瀬戸藩)を舞台に、繰り広げられる人間模様を描き上げる連作時代小説。藤沢周平作品を彷彿させる下級藩士たちの日常の一コマが、何ともいえないリアリティがあって共感を持ちながら読み進めることができる。まさに瀬戸内の海坂藩という感じだ。

とくに、昼行灯とか空豆とか、周囲に揶揄されながら、目立たぬように生きてきた勘定方三十五石取りの来栖又造が、自身を襲った凶事に立ち向かう「空豆」の話など、端正な作風で印象に残る物語である。

次の作品が楽しみな新しい作家の登場である。

たそがれ清兵衛 (新潮文庫)

たそがれ清兵衛 (新潮文庫)