えとう乱星さんの『ほうけ奉行―若宮隼人殺生方控 (ベスト時代文庫)』を読了。10年近く文庫化を待ち続けた甲斐があった、第1作の『かぶき奉行―織部多聞殺生方控 (ベスト時代文庫)』に匹敵する傑作伝奇小説だ。
徳川五代将軍綱吉の生類憐みの令の時代を舞台にし、本来は狩猟全般を取り仕切る役目の殺生方が、犬など生き物を殺生した者の取り締まり役へと変節を余儀なくされた。心ある殺生方は、金品をせびって罪を見逃すか、惚(ほう)けるしかない。若宮隼人は、亡き父の役職だった殺生方与力に任ぜられて心躍らせていた…。
前作『かぶき奉行―織部多聞殺生方控 (ベスト時代文庫)』からおよそ三十年が経過した設定で、主人公などが主要な登場人物が入れ替わる中で、前作の主人公織部多聞と光圀が引き続き登場するのが、前作からのファンにはたまらないところ。綱吉も前作でチラッと姿を見せている。
その座敷に、背を丸めて一心に画布に筆を走らせる人の姿があった。これこそ徳川五代将軍・綱吉その人である。だが、天下人たるその姿はあまりにも小さく、頼りなげだった。
――事実、徳川綱吉の身長は百二十センチほどしかなかったと見られる――
(『ほうけ奉行』P.278より)
江戸時代の人の平均身長は、今よりも20cmぐらい低いと思っていたが、綱吉の身長が120cm台と聞いて、ちょっと驚いた。歴代将軍の体のことが気になりはじめたら、『徳川将軍家十五代のカルテ (新潮新書)』という本が出ていた。今度読んでみようと思う。
- 作者: 篠田達明
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/05/16
- メディア: 新書
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